「相続登記をしなくても、今すぐ困ることはない。」
そのように考えている方は少なくありません。しかし、相続登記が行われていない土地や建物は、災害が発生した際に地域全体の復旧・復興を遅らせる原因になることがあります。
相続登記は、単に個人の財産を守るためだけの手続ではありません。地域の防災力にも深く関わる重要な制度です。
災害時には土地が必要になります
大きな地震や豪雨などの災害が発生すると、自治体は限られた時間の中でさまざまな対応を進めます。
例えば、
- 仮設住宅の建設
- 救援物資の集積所
- 災害用資材の保管場所
- 重機や復旧車両の待機場所
- 災害廃棄物の仮置場
こうした施設を設置するためには、まとまった土地を迅速に確保する必要があります。
所有者が分からない土地は、すぐに使えません
問題となるのが、相続登記がされていない土地です。
登記簿には何十年も前に亡くなった方の名前が残ったままで、実際の相続人が何人いるのか分からないケースも珍しくありません。
このような土地では、
- 誰と契約すればよいのか
- 使用の承諾を誰から得ればよいのか
- 補償金を誰に支払えばよいのか
がすぐには判断できません。
その結果、本来ならすぐ活用できる土地であっても、調査や手続に時間を要し、防災対策や復旧作業が遅れてしまう可能性があります。
仮設住宅の建設にも影響します
災害後、多くの被災者が生活する仮設住宅は、一日でも早い建設が求められます。
しかし、候補地が相続登記未了の土地だった場合、土地の権利関係を確認するために時間を要することがあります。
もちろん、災害時には特別な法制度や行政上の対応が行われる場合もありますが、それでも権利関係が明確な土地に比べると、手続が複雑になることは避けられません。
結果として、別の土地を探さなければならなくなったり、復旧計画全体に影響が及ぶことも考えられます。
救援物資の保管場所も必要です
災害発生直後には、
- 飲料水
- 食料
- 毛布
- 簡易トイレ
- 発電機
- ブルーシート
など、多くの支援物資が届けられます。
これらを保管・仕分けする広い土地や倉庫が必要になります。
しかし、所有者が分からない土地では、迅速な利用が難しくなることがあります。
「たった一筆の土地だから関係ない」と思われるかもしれませんが、その土地が地域の重要な拠点になる可能性もあるのです。
相続登記は地域への備えでもあります
相続登記は、
- 自分たちの財産を守るため
- 相続トラブルを防ぐため
だけではありません。
災害時に行政や地域が迅速に動けるようにするという意味でも、大切な社会的役割があります。
令和6年4月からは、相続登記が義務化されました。
義務化の背景には、所有者不明土地の増加が、防災やまちづくり、公共事業など様々な場面で大きな課題となっていたことがあります。
まとめ
地震や豪雨は、いつ起こるか分かりません。
災害が発生したその時、地域では「使える土地」が一つでも多いことが、多くの命や生活を支えることにつながります。
相続登記は、未来の自分や家族のためだけでなく、地域全体の安全にもつながる手続です。
「まだ困っていないから」と先送りにせず、相続が発生したら早めに手続きを進めることをおすすめします。
司法書士から一言
相続登記は、財産を守る手続であると同時に、地域社会を支える手続でもあります。
「何から始めればよいか分からない」「相続人が多くて手続が進まない」といった場合でも、司法書士がお手伝いできます。気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
